相続税の調査を受けたときに税務当局と名義預金で見解の相違があったときは、過去の税務訴訟を参照し処分の理由を精査することも必要です。
国税局査察部が相続税法違反で立件した名義預金に関する裁判(神戸地裁平成26年1月17日)では、納税者が3億5千万円の名義預金を申告せず調査を受けましたが、「偽りその他不正の行為」はないとして無罪判決が出されたことがあります。
この裁判の注目点は、脱税を立証するには逋脱の意図(故意)が必要なのですが、その逋脱の意図は「未必の故意」で足りるのかということでした。所得があることや申告義務があることを認識していれば、申告しなければ税金をごまかすことになるかもしれないことは理解できるでしょう。検察側は未必の故意があれば有罪、法の不知でも有罪と主張しましたが、裁判官はその主張を認めませんでした。
ちなみに税務調査では、「特段の行動」をした上でその意図に基づいて過少申告をした場合など、殊更の過少申告等を理由として重加算税を課すケースがありますが、「特段の行動」は確定的故意であることを示す一例で、それはイコール「仮装隠蔽行為」ではないと考えます。
なお過去の判例では、納税者の申告前後の事実関係から間接的に不正があったと評価するケースもありました。
ちなみに、事実とは実際に起きた事柄を、評価は事実に対する判断(認定)を指し、税務調査の場面でこれらは課税要件を定めるロジックとなります。
相続税の税務調査で税務当局の処分に納得がいかない方は、一度専門家に相談してみるのもいいかもしれません。