外国税額控除と国際的租税回避

国際課税
この記事は約3分で読めます。

緊急事態宣言が発令されても、コロナの状況はなかなか改善しません。

そんな中、オーストラリアのある研究所が、世界各国のコロナ対応を評価したサイトを見つけました。1位はニュージーランド、2位はベトナム、3位が台湾、そして日本は45位でした。

ちなみに1位となったニュージーランドですが、国際的租税回避スキームの世界では、ちょっとした有名な国でもあります。もちろん、ニュージーランド自体がタックスヘイブン(租税回避地)と言っているわけではありません。この国のある法人が仕掛けた外国税額控除のスキームの話です。

日本で税務訴訟になった事件で、1審2審は国が敗訴したのですが、最高裁でひっくり返り国が勝訴した事件なので、国際税務に携わっている人なら誰でも知っているはずです。全体像は大雑把に言うと次のような流れになります。

ニュージーランド(NZ)法人C社が、NZの北東にあるクック諸島で、E社とF社を支配しています。C社は投資家から集めた資金(NZドル)を、E社に送金しF社にて運用することを企画します。理由はC社が税金の安いクック諸島を上手に利用したいからです。

ただ、E社からF社への単純な資金シフト(貸付金)では、クック諸島でも15%の税金が課せられます。そこで、日本のD銀行のシンガポール(SG)支店を、E社とF社の間に入れて、E社がD銀行SG支店に預金(USドル)をし、D銀行SG支店がF社に貸付(USドル)をすることで、E社からF社への資金シフトを試みます。F社はD銀行SG支店への利息のうち、クック諸島の税金15%を控除して返済するので、D銀行SG支店がクック諸島の税金15%を負担することになります。D銀行SG支店はE社に対し預金利息を支払いますが、このときはSGの税制上、税金が課されません。

この取引とあわせて、F社がD銀行SG支店から借り入れたUSドルと、NZドルを保有するE社との間で通貨スワップをし、F社とE社で貸借取引(USドル)をすることで、EDF間にUSドルの循環取引を成立させ、F社はNZドルを運用することが可能になります。

その後、D銀行本店は、D銀行SG支店のクック諸島で源泉された15%を、日本の税金から外国税額控除することで、D銀行自体の負担を回避する仕組みになっています。(分かり易さを優先に時系列等に正確性を欠くことご容赦願います)

このスキームの結果、外国法人C社、E社、F社と日本のD銀行は、税金の負担を回避できるようになっており、日本の税金だけが還付されて減少することになります。

税務当局は、このような源泉税を吸収するスキームは、外国税額控除の趣旨を逸脱した法形式の乱用なので、源泉税15%を外国法人税として認めないとし、最終的に国が最高裁で勝訴したという話です。

国際的租税回避の事件は、日本の税制のみならず、外国の法令も精査する必要がある難解な分野です。源泉税回避スキームの事件はこのほかにも複数あり、仕組預金の組成や特別目的会社(SPC)の利用により、課税を回避していく手法が存在します。