国際相続と反致

相続税
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中国の2021年1~3月期のGDPが、前年同期比+18.3%と四半期ベースで過去最高の伸びとなったようです。中国が発表する経済指標は信憑性がないとの声も聞かれますが、中国がコロナ禍でも世界経済の牽引国として力強さを示し、アジアに大きな影響力を与える大国であることは間違いありません。日本にも不動産投資をしている中国人の富裕層は一定数いるはずです。

ところで、中国籍の方が日本で亡くなった場合の相続は、日本国籍の方の場合とどんな違いが生じるでしょうか。「国際相続と税」の記事の中で「法の適用に関する通則法」について簡記しましたが、日本では「相続は被相続人の本国法による」との規定があります。このケースで被相続人の本国法(被相続人の国籍の法律)に「相続は住所地法による」と規定があったとしたら、今度はどうなるでしょうか。この場合、準拠法はまた日本に戻ることになります。これを「反致」といいます。(法の適用に関する通則法41条)

例えば、中国は国外不動産の相続の準拠法を所在地法と定めているので、中国籍の方が所有していた日本の不動産の相続は、反致により日本法が準拠法となります。

ここで疑問に思った方がいるかもしれませんが、実はこの準拠法には理論上2つの考え方が存在しています。一つは被相続人の財産を不動産と動産にわけて所在地法と本国法の適用をする考え方(相続分割主義)、もう一つは被相続人の全ての財産に住所地法か本国法を適用する考え方(相続統一主義)です。日本は後者の考え方ですが、日本と法のルーツを同じくする大陸法の国々もこの考え方を採用し、前者は英米を中心としたコモンローの国々が採用している印象があります。

ちなみに、「本当に被相続人の子供なのか」という問題が発生した場合などには、先決問題として準拠法に基づきそれらの問題を整理したのち、次に各種の相続問題を準拠法によって解決するというプロセスをとることになります。

海外が関わる相続税申告書の作成は、入口から複雑な問題を整理しながら進める必要があり、更に国籍法や財産の所在にも慎重な判断が求められるので、税務会計の専門家の中でさえ、正しい処理が困難なケースが生じています。