非居住者の退職金と確定申告

国際課税
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高年齢者雇用安定法が改正され、令和3年4月から70歳までの就業確保が事業主の努力義務になりました。会計事務所も高齢化が進んでいますが、所員も税務会計の知識のみならず、70歳まではIT化と国際化のスピードに取り残されないよう常に自己研鑽が必要な時代です。退職したら退職金で世界を一周して海外で優雅に年金生活をする、そんなことができるのは一部の限られた人だけでしょう。

ところで、日本を出国した海外居住者(非居住者)の方で、日本法人等から退職金の支払いを受けた際に支給額の20.42%を源泉徴収された方は、非居住者として確定申告することで税金の還付を受けられることがあります。

個人の確定申告には一般の確定申告と異なる特殊な申告がありますが、そのうちの一つが非居住者の退職金の確定申告(退職所得の選択課税申告書)です。

海外居住者以外の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、一般の確定申告書とは別の条文で規定されていますので、すでに確定申告書を提出している場合であっても、退職所得の選択課税申告書を提出し還付を受けることができます。

退職所得の選択課税を定める所得税法171条は、分離課税の所得税率を定めた170条の特例として規定されています。そのため、基礎控除を含む各種所得控除は適用できません。

非居住者で退職金の確定申告ができるケースは、厚生年金の脱退一時金などで該当することが多いと思われますが、通常、退職金収入の20.42%が源泉徴収課税で完結されているので、退職所得控除を利用した正当計算をすれば殆どのケースで税金が還付されるはずです。

もちろん、非居住者の申告ですから納税管理人をたてる必要はあります。

また、申告書の提出先は納税管理人の住所地ではなく、出国前の納税地を管轄する税務署になることも注意が必要です。

 参考:国税庁HP「退職手当等に対する源泉徴収」