非居住者の納税地

相続税
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東エルサレムでイスラエル警察とパレスチナ人が衝突したとのニュースが流れていました。パレスチナが将来の国家の首都と位置付ける地域で起きた事件です。国家や国境という問題が日常になっている人の心境は、日本に住む自分にとって想像し難いものです。当たり前に住んでいる場所が過去のものになったり、予想もしない場所に住むことになったり、人がある場所に「住む」ことの意味を改めて考えさせられます。

ところで、海外居住者である非居住者の方が、日本の国内源泉所得を申告する場合には、納税管理人をたてる必要があることは過去の記事で紹介しました。では、その納税管理人を通じて提出する申告書はどこの税務署に提出するのでしょうか。

個人の税金を定める所得税法では次のようにルールを定めています。

【所法第十五条】

所得税の納税地は、納税義務者が次の各号に掲げる場合のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める場所とする。

一 国内に住所を有する場合

⇒ その住所地

二 国内に住所を有せず居所を有する場合

⇒ その居所地

三 前二号に掲げる場合を除き恒久的施設を有する非居住者である場合

⇒ その恒久的施設を通じて行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地(これらが二以上ある場合には、主たるものの所在地)

四 第一号又は第二号の規定により納税地を定められていた者が国内に住所及び居所を有しないこととなった場合において、その者がその有しないこととなった時に前号に規定する事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを有せず、かつ、その納税地とされていた場所にその者の親族その他その者と特殊の関係を有する者として政令で定める者が引き続き、又はその者に代わって居住しているとき。

⇒ その納税地とされていた場所

五 前各号に掲げる場合を除き、第百六十一条第一項第七号(国内源泉所得)に掲げる対価(船舶又は航空機の貸付けによるものを除く。)を受ける場合

⇒ 当該対価に係る資産の所在地(その資産が二以上ある場合には、主たる資産の所在地)

六 前各号に掲げる場合以外の場合

⇒ 政令で定める場所

【所令第五十四条】

法第十五条第六号(納税地)に規定する政令で定める場所は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に掲げる場所とする。

一 法第十五条第一号から第五号までの規定により納税地を定められていた者がこれらの規定のいずれにも該当しないこととなった場合(同条第二号の規定により納税地を定められていた者については、同号の居所が短期間の滞在地であつた場合を除く。)

⇒ その該当しないこととなった時の直前において納税地であつた場所

二 前号に掲げる場合を除き、その者が国に対し所得税に関する法律の規定に基づく申告、請求その他の行為をする場合

⇒ その者が選択した場所(これらの行為が二以上ある場合には、最初にその行為をした際選択した場所)

三 前二号に掲げる場合以外の場合 麹町税務署の管轄区域内の場所

所得税法では納税地について、麹町税務署が最後に納税地の役割を担う規定(バスケット条項)となっていますので、個人の税金に関する申告はこのルールに基づいて納税地を判断し申告書を提出することになります。

問題は相続税や贈与税に関する非居住者の納税地です。相続税法は所得税法ほど詳細なルールを定めていないので、納税者が納税地を定める必要があります。

相続(贈与)の税金を定める相続税法では次のようにルールを定めています。

【相法第六十二条】

 相続税及び贈与税は、第一条の三第一項第一号、第三号若しくは第五号又は第一条の四第一項第一号若しくは第三号の規定に該当する者については、この法律の施行地にある住所地(この法律の施行地に住所を有しないこととなった場合には、居所地)をもつて、その納税地とする。

2 第一条の三第一項第二号若しくは第四号又は第一条の四第一項第二号若しくは第四号の規定に該当する者及び第一条の三第一項第一号、第三号若しくは第五号又は第一条の四第一項第一号若しくは第三号の規定に該当する者でこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるものは、納税地を定めて、納税地の所轄税務署長に申告しなければならない。その申告がないときは、国税庁長官がその納税地を指定し、これを通知する。

3 納税義務者が死亡した場合においては、その者に係る相続税又は贈与税(第二十七条第二項(第二十八条第二項及び第二十九条第二項において準用する場合を含む。)の規定に該当する場合の相続税又は贈与税を含む。)については、その死亡した者の死亡当時の納税地をもつて、その納税地とする。

理論的には納税地が定まらないと納税管理人を選任できませんが、実務上は納税管理人の選任と納税地の定めを同時にすることになります。

参考:国税庁HP「確定申告書の提出先(納税地)」