令和2年度の税制改正で、国外中古建物の不動産所得の損失に係る損益通算が認められないことになりました。
米国中古不動産は、日本と異なり経年とともに資産価値を形成していく場合があることは周知の事実です。過去にはこれと似たような取引で、任意組合とノンリコースローンを利用した航空機リースにより、意図的に不動産所得の赤字を作り出し、税金を還付するスキームが問題となりました。その後も、任意組合、匿名組合、LPSと、スキームに利用する事業体の違いこそあれ、個人の所得に対する損失の通算で、税還付を目的とする投資商品が出てきました。
LPSに関して言えば、外国の事業体が日本でいう法人に該当するという税務当局の理論も、パススルーを阻止するために、米国デラウェア州法を精査し法人と認定することで、平成27年の「デラウェア州LPSは外国法人である」とした最高裁判決を引き出したと考えています。
国際的租税回避スキームの世界では、平成18年の映画フィルムリース事件が、税務当局の否認理論の鏑矢となっていると考えていますが、このときは裁判で勝訴はしたものの、税務当局が主張した「私法上の法律構成の否認」は最高裁では採用されませんでした。
最近の国際的租税回避スキームに関する記事を見ると、昔から争点となる本質的な部分は何も変わっていないように感じます。今後も税務当局は、調査による証拠収集によって事実関係を積み上げ、全体的な取引を解明し真実を明らかにする、この基本的なスタンスで租税回避の否認に挑んでいくと思われます。