ネット上では相続税の節税対策に関する記事が増えてきました。基本的に相続税の節税対策は、専門家が依頼者の家族を含めた全ての財産を把握していることが前提となります。土地を低く評価する計算上のテクニックや高度な事業承継も、隠し子の存在や配偶者の生前資金の隠蔽が明らかになると、分割協議が紛糾し一転争族に陥ります。
相続税の節税対策は、法人税の節税対策と根本的に異なります。相続税は生身の人間を扱う税金です。申告書にはプライベートが現れます。一方で法人税は営利の追求を扱う税金です。申告書には儲けが現れます。営利法人であれば向かうベクトルは同じですが、相続人は考え方の違う人の集まりでベクトルが同じとは限りません。
例えが少し異なるかもしれませんが、東京のタワーマンションの相続税評価を技術的に下げることで長男がそれを3億円で相続したとしましょう。次男は現金を3億円相続することで分割協議に応じたのですが、直後に長男がタワーマンションを5億円で売却したら次男は納得するでしょうか。
分割協議書にサインしたならそれでお終いというのは法律上の考え方で、人間の気持ちはそう簡単にわりきれるものではありません。禍根を残さない相続税対策は各人の意向が関わるだけにより繊細さが求められると考えます。
参考:国税庁HP「隠蔽又は仮装に係る財産があった場合の配偶者に対する相続税額の軽減」
参考:国税庁HP「遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税」