遺留分侵害額

相続税
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国際的に有名なサザビーズのオークションで、ピカソの作品11点が合計1億890万ドル(約123億7,000万円)で落札されたそうです。

実はこの絵画の時価、相続税の申告書作成の時価評価の中でも厄介な作業なのですが、自宅に何気に飾ってあった絵画が非常に価値あるものであっても、それを理解できる人間が周りにいない限り、なかなか正当な評価はされないものです。遺産分割の協議成立後に、相続人が絵画の本来の価値を知った時には、分割協議に瑕疵があったとして無効を主張することになるでしょう。

ところでこの遺産分割という話ですが、相続税の申告実務とも密接に関わっています。相続に携わる専門家がこの分野に精通することは必須ですが、最近の民法改正でこの遺産分割に大きな影響を及ぼすことになる遺留分の侵害請求権が創設されましたので、ここでもう一度その性質を詳細に説明したいと思います。

遺留分侵害請求権の性質は、

(以下、井上繁規『〔三訂版〕遺産分割の理論と審理』(新日本法規 令和3年10月出版)

より引用)

「新民法の遺留分侵害請求権は、形成権であり、遺留分権利者が遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をすると、遺留分権利者の受遺者又は受贈者に対する、遺留分侵害額に相当する具体的な金銭債権が発生するという効果が生じ」「請求権の行使の効果は、遺留分侵害の原因となっている遺贈や贈与の効力は維持したままで、遺留分権利者の受遺者又は受贈者に対する、遺留分侵害額に相当する具体的な金銭支払請求権が発生するもの」です。

遺産分割の法理論も人間の感情が複雑に絡む分野だけに精緻なものが求められます。相続は節税対策より相続人の間の争いを回避することが最優先と考えます。