海外財産の取得時期と贈与税

国際課税
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今回は、名古屋国税局管内であった贈与税の海外事案で、資産税(相続税・贈与税)の国際税務に携わった人達なら一度は聞いたことがある有名な東京高裁の判決を紹介します。

納税者は米国居住者ですが、親から米国カリフォルニア州の不動産(ジョイントテナンシー)を贈与してもらうにあたり、日本国内で贈与契約書を作成しました。当時は住所が日本国内になければ、国外財産には課税されないはずでしたが、税制改正があり贈与契約の成立時期によっては申告と納税が必要になりました。税務当局はこの案件に着手し取得時期が改正後であると認定して課税処分した事件です。

この事件のポイントは、米国カリフォルニア州法をどう解釈するかということにつきます。

贈与契約書は日本で作成されていますが、米国カリフォルニア州の不動産は準拠法が米国になり、米国では不動産の準拠法は財産が所在する州法になります。

日本の贈与契約書はカリフォルニア州法に準拠していないので贈与の日を決定できません。物権変動の効果は米国法で解釈することになります。そうすると、米国カリフォルニア州の贈与は、口頭贈与やDEEDによらない書面は無効となるため、DEEDを交付した日が物件の取得時期となるわけです。

今回の事件ではこの交付した日が税制改正後となったため課税対象となりました。

この判決ではジョイントテナンシーの性質についても議論になりましたが、国際間での贈与税問題は各国の法律制度を含めた総合的な判断が重要となります。