重国籍と相続税

国際課税
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今回は国籍法について少し触れたいと思います。 

日本では、憲法第10条で「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」とし、これを受けて国籍法が日本国民の要件を規定しています。

日本以外の国でも各国の国籍はそれぞれの国の法律によって定められていますが、国籍の決め方は国によって大きく異なります。

大別すると血統主義と生地主義に分類され、血統主義は親の国籍を取得するイメージ、生地主義は生まれた場所の国籍を取得するイメージです。そしてこの違いが国際化の中で様々な問題を生じさせています。

例えば、日本人と韓国人の間に生まれた米国出生の子供の国籍はどうなるのでしょうか。

日本の国籍法は「日本国民は、自己の志望によって外国籍を取得した時は、日本国籍を失う」と定め、原則、二重国籍はあり得ない立場です。

令和3年1月21日の東京地裁判決も「重国籍が常態化した場合には、国家間の外交保護権が衝突し、国家と個人との間又は個人と個人との間の権利義務に矛盾衝突を生じさせるおそれがあるから、できる限り重国籍を防止し解消させるべきであるという理念は合理性を有する」と判断しています。

一方で相続税の実務では、重国籍のケースが生じた場合、相続税基本通達1の3・1の4共-7で「法第1条の3第1項第2号イ又は第1条の4第1項第2号イに規定する「日本国籍を有する個人」には、日本国籍と外国国籍とを併有する重国籍者も含まれるのであるから留意する。」と取り扱うよう明文化しています。

国籍の選択を求められる人と相続税の実務を扱う法律家には、これらの問題で判断が困難なケースが生じている印象があります。

国民の定義は法律が決めるのですが、国際化した社会では日本国籍を取得していても、多くの人がイメージする典型的な日本人の容姿とは限りませんし、文化やルーツが異なるのが当たり前なのもまた国籍と言える時代なのかもしれません。

 参考:国籍法