アメリカでは2人以上で不動産を所有する場合、所有形態として複数のパターンが存在しています。
一つは「Tenancy in common」で、日本語では「共有不動産権」などと訳されることが多いですが、日本でいう不動産を共有するイメージの所有形態です。
もう一つは「Joint Tenancy」で、日本語では「合有不動産権」などと訳されます。これも2人以上で不動産を共有するイメージですが、「Tenancy in common」とは大きく異なり、権利を所有する誰か1人が死亡したとき、相続を発生させずに残った人に権利を吸収させるという特徴がある所有形態です。権利設定時に意図を明確にしないと「Tenancy in common」とみなされることがあり、譲渡や贈与には他の共有者の同意も必要で遺贈はできません。(州法によって若干の違いはあります)
相続発生時の面倒な手続きを簡素化するために利用される手段ですが、日本の相続税や贈与税が絡んでくると複雑な議論が生じてきます。
「Joint Tenancy」で相続が発生した場合の課税関係について、国税庁が質問に回答した事例がありますのでそのまま紹介します。少々ややこしいですが、結論としては相続税がかかるということです。
「被相続人の合有不動産権が移転したことによる生存合有不動産権者の権利の増加は、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するため、生存合有不動産権者が移転を受けた被相続人の合有不動産権の価額に相当する金額については、被相続人から贈与により取得したものとみなされることになります(相法9)。
したがって、生存合有不動産権者が被相続人から相続又は遺贈により財産を取得している場合には、被相続人から贈与により取得したものとみなされた合有不動産権の価額に相当する金額は、相続税の課税価格に加算され(相法19①)、相続税の課税対象となります。」
海外の物件変動は日本のそれと異なるため、課税要件に該当する具体的な事実の証明が困難なケースは多いのですが、ジョイント・テナンシーの問題は自分が初めて関わったときから20年以上が経ち、当時に比べ資産税の国際課税問題がクローズアップされ取扱いが明文化されてきた印象です。