外国税額控除と国際的租税回避

国際課税
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来月からラグビーワールドカップ2023が開催されます。開幕戦は開催国で優勝候補のフランスとニュージーランドの対決です。ニュージーランドといえばオールブラックスが有名ですが、税金に関して言えば、外国税額控除の国際的租税回避スキームで有名な国の一つです。日本で税務訴訟となり1審2審は納税者が勝訴しましたが、最高裁で逆転判決が出され国税が勝訴しました。

全体像を紹介すると次のような流れになります。

ニュージーランド(NZ)法人C社が、NZの北東にあるクック諸島で、E社とF社を支配しています。C社は投資家から集めた資金(NZドル)を、E社に送金しF社にて運用することを企画します。理由はC社が税金の安いクック諸島を上手に利用したいからです。

ただ、E社からF社への単純な資金シフト(貸付金)では、クック諸島でも15%の税金が課せられます。そこで、日本のD銀行のシンガポール(SG)支店を、E社とF社の間に入れて、E社がD銀行SG支店に預金(USドル)をし、D銀行SG支店がF社に貸付(USドル)をすることで、E社からF社への資金シフトを試みます。F社はD銀行SG支店への利息のうち、クック諸島の税金15%を控除して返済するので、D銀行SG支店がクック諸島の税金15%を負担することになります。D銀行SG支店はE社に対し預金利息を支払いますが、このときはSGの税制上、税金が課されません。

この取引とあわせて、F社がD銀行SG支店から借り入れたUSドルと、NZドルを保有するE社との間で通貨スワップをし、F社とE社で貸借取引(USドル)をすることで、EDF間にUSドルの循環取引を成立させ、F社はNZドルを運用することが可能になります。

その後、D銀行本店は、D銀行SG支店のクック諸島で源泉された15%を、日本の税金から外国税額控除することで、D銀行自体の負担を回避する仕組みになっています。(分かり易さを優先に時系列等に正確性を欠くことご容赦願います)

このスキームの結果、外国法人C社、E社、F社と日本のD銀行は、税金の負担を回避できるようになっており、日本の税金だけが還付されて減少することになります。

税務当局は、このような源泉税を吸収するスキームは、外国税額控除の趣旨を逸脱した法形式の乱用なので、源泉税15%を外国法人税として認めないとし、最終的に国が最高裁で勝訴したという話です。

国際的租税回避スキームの事件は、日本の税制のみならず、外国の法令も精査する必要がある難解な分野です。源泉税回避スキームの事件は他にもあり、仕組預金の組成や特別目的会社(SPC)を利用する手法が存在しましたが、現在は税制改正等によりその多くが封じられています。