倒産隔離と国際スキーム

国際課税
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コロナ関連の経営破綻が、2020年の2月から2021年1月29日までに936件に達したと、東京商工リサーチが発表していました。業種別では飲食店が164件と突出しているようです。事業の継続が困難になり、倒産を余儀なくされる法人は今後も増加するでしょう。

ところで、前述の倒産とは全く話が異なりますが、国際スキームの世界には、倒産を防ぐ目的で設立された会社(事業体)が存在します。俗に言う、SPE、SPV(特別目的事業体)、SPC(特定目的会社)などです。

国際スキームに携わると、この倒産隔離の仕組みは必ず目にすることになります。例えば、身近にある消費者金融の原資の中には、地方銀行の預金が外資系証券会社等を通じ、タックスヘイブンのSPC経由で還流したものがあるはずです。

ただし、タックスヘイブンであるケイマンにSPCを設立して資金を集めることは、それ自体合法的で問題ないとされています。

倒産隔離の一例としては、ケイマンにある現地の法律事務所が1ドルでSPCを設立し、事業終了時に資本金を慈善団体に寄付することを宣言して、慈善信託(チャリタブルトラスト)になることで、資産の所有者とSPCの資本関係を切り離し、SPC自体の倒産を防ぎます。

税務当局から見れば、慈善信託の設立を依頼した者が誰で、実質的な管理が誰なのかが判明すれば、何らかの課税関係を検討する可能性があると思うのですが、海外での証拠収集や真実の取引解明が、税務調査でどこまで明らかにできるのかが問題となりそうです。

 参考:国税庁HP「査察調査における国外証拠収集について」