韓国サムスングループの「李健熙」会長の相続税が話題になっています。遺産が日本円で約2兆円、納税額が1兆2千億円以上というので、遺族の税負担は名古屋市の一般会計歳入並みです。韓国には日本と同様に相続税がありますが、韓国の経営者からは相続税の税負担が国際的にも高すぎるとの不満の声が上がっているようです。
昨今はコロナ禍で各国の財政も悪化しているので、資産家への課税はむしろ強化される方向になりがちですが、いずれにせよ次世代への資産移転に対する税金は、今後日本の相続税を含め変わる可能性がありそうです。
ところで、海外に不動産や預金を有している人に相続が発生したときは、日本の法律のみならず海外の法律も必然的に影響することになります。相続税の申告にあたっても、海外資産が相続財産になるのか、誰が相続するのか、現地の取扱いはどうなるのかを検討する必要があるので、日本国内の遺産だけの相続の場合に比べ、申告は複雑で慎重な判断も必要です。
一般的に、ある問題が国境を跨ぐようなときは、どこの国の法律を適用するのかという準拠法が非常に重要になってきます。国際相続では日本の法律だけでは対応できない問題が生じるからです。この問題に対し、日本では「法の適用に関する通則法」という法律が存在していて、相続税申告の実務でも、この法律の扱いが極めて重要になってきます。
例えば外国籍の方が日本で亡くなった場合、法の適用に関する通則法36条では、「相続は、被相続人の本国法による」と規定しているので、日本の法律ではなく、その方の本国法に則って遺産分割が行われることになります。
一方で、相続税の税額計算には日本の税法が適用されるので、算出税額は日本国籍者の場合と変わりませんが、各相続人の法定相続分は各国の法律によって異なることから、未分割の場合、法定相続分に応じた各人の税負担は、国籍によって変わることになります。
少し面倒な話を加えると、遺言には「遺言の方式の準拠法に関する法律」が別に規定されていますので、このケースで相続人間の争いが生じると一層複雑な問題に発展します。
このように相続税法と国籍は非常に密接に関係しており、かつ重要なトピックとなりますので、これらの話題はまた別の機会に改めて紹介したいと思います。