相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

国際課税
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今回は国際資産税の実務で扱う税法を一部紹介します。

海外居住者の方がいる場合の相続税や贈与税の節税対策には、国外転出時課税の検討はもちろんのこと、関係する税法の解釈も非常に重要となります。国外転出時課税の実務に初めて従事した際、難解だった条文の一つに租税特別措置法第39条「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」があります。

国税庁HPでは「相続又は遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。」と紹介されています。

この法律は所得税法の特例ですが、相続税や贈与税の国際税務とも密接に関連しており、法律の各条文が何を意味しているのかを確認するだけでも大変なので、条文の一部を対応する項目だしに置き換えて、一旦全体像を把握していました。

ちなみに、措置法39条の譲渡は所得税法33条1項の資産の譲渡と同じと考えますので、国外資産も対象となります。

以下、参考に項目だしに置き換えた条文を紹介しますが、複雑なので関心のある方のみご覧ください。7項は置き換えがむしろ条文を不明瞭にしたので換地処分と権利変換の一部を削除しています。(実務家の方はこの条文を読むことなく法令を確認願います)

【相続財産に係る譲渡所得の課税の特例】

第39条 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下この条において同じ。)による財産の取得(相続税法又は農地等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例、個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例、非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例若しくは非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例により相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む。第六項において同じ。)をした個人で当該相続又は遺贈につき相続税法の規定による相続税額があるものが、当該相続の開始があった日の翌日から当該相続に係る相続税の申告書又は相続財産法人に係る財産を与えられた者等に係る相続税の申告書(これらの申告書の提出後において遺贈により取得したものとみなす場合に規定する事由が生じたことにより取得した資産については、当該取得に係る修正申告の特則の規定による申告書。第四項第一号において「相続税申告書」という。)の提出期限(第四項第一号において「相続税申告期限」という。)の翌日以後三年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格(相続開始前三年以内に贈与があった場合の相続税額又は相続時精算課税に係る相続税額から相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等までの規定の適用がある場合には、これらの規定により当該課税価格とみなされた金額)の計算の基礎に算入された資産の譲渡(長期譲渡所得の課税の特例に規定する譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項、第四項及び第八項において同じ。)をした場合における譲渡所得に係る譲渡所得の規定の適用については、譲渡所得に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする。

 第一項の規定は、第一項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書又は修正申告書(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があった場合等の修正申告の特例の規定により提出するものに限る。次項において同じ。)に、第一項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、第一項の規定による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

 税務署長は、確定申告書若しくは修正申告書の提出がなかった場合又は第二項の記載若しくは添付がない確定申告書若しくは修正申告書の提出があった場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び第二項の財務省令で定める書類の提出があった場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

 次の各号に掲げる者が第一項に規定する課税価格の計算の基礎に算入された資産の譲渡について第一項の規定を適用することにより、当該譲渡をした者の当該譲渡の日の属する年分の所得税につき国外転出をした者が帰国をした場合等の更正の請求の特例に掲げる場合に該当することとなる場合には、その者は、それぞれ次の各号に定める日まで、税務署長に対し、更正の請求をすることができる。

 当該資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告期限の翌日から相続税申告期限までの間に相続税申告書の提出(在外財産等の価額が算定可能となった場合の修正申告等(国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等において準用する場合を含む。)の規定により用語の意義(期限内申告書)に規定する期限内申告書とみなされるものの提出を含む。以下この号において「相続税の期限内申告書の提出」という。)をした者(当該確定申告期限までに既に相続税申告書の提出をした者及び当該相続税の期限内申告書の提出後に確定申告書の提出をした者を除く。)

当該相続税の期限内申告書の提出をした日の翌日から二月を経過する日

 当該資産の譲渡をした日以後に当該相続又は遺贈に係る被相続人(包括遺贈者を含む。)の当該相続の開始の日の属する年分の所得税につき贈与等により取得した資産の取得費等の規定の適用があったことにより、非居住者である受贈者等が帰国をした場合等の修正申告の特例の規定による修正申告書の提出又は非居住者である受贈者等が帰国をした場合等の更正の請求の特例の規定による更正の請求に基づく国税通則法更正又は再更正の規定による更正(当該請求に対する処分に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決を含む。以下この項及び第九項において「更正」という。)があった者

当該修正申告書の提出又は更正があった日の翌日から四月を経過する日

 当該資産の譲渡をした日以後に当該相続又は遺贈に係る被相続人(包括遺贈者を含む。)の当該相続の開始の日の属する年分の所得税につき遺産分割等があった場合の修正申告の特例に規定する遺産分割等の事由が生じたことにより、遺産分割等があった場合の修正申告の特例の規定による修正申告書の提出又は遺産分割等があった場合の更正の請求の特例の規定による更正の請求に基づく更正があった者

当該修正申告書の提出又は更正があった日の翌日から四月を経過する日

 第二項及び第三項の規定は、第四項の規定により更正の請求をする場合について準用する。この場合において、第二項中「確定申告書又は修正申告書(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があった場合等の修正申告の特例の規定により提出するものに限る。次項において同じ。)に、前項」とあるのは「更正請求書に、同項」と、第三項中「、確定申告書若しくは修正申告書」とあるのは「、次項各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める日までに更正請求書」と、「添付がない確定申告書若しくは修正申告書」とあるのは「添付がない更正請求書」と、「その提出」とあるのは「同日までにその提出」と読み替えるものとする。

 第一項に規定する相続税法の規定による相続税額は、同一の被相続人(農地等についての相続税の納税猶予及び免除等に規定する被相続人をいう。)からの相続又は遺贈による財産の取得をした者のうちに農地等についての相続税の納税猶予及び免除等の規定の適用を受ける者がある場合には、農地等についての相続税の納税猶予及び免除等に規定する納付すべき相続税の額とし、相次相続控除、相続時精算課税に係る相続税額又は相続時精算課税に係る相続税額の規定により控除される金額がある場合には、相続税法の規定による相続税額又は当該納付すべき相続税の額に当該金額を加算した金額とする。

 第一項に規定する課税価格の計算の基礎に算入された資産には、相続又は遺贈による当該資産の移転につき贈与等の場合の譲渡所得等の特例又は贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の規定の適用を受けた資産(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例ただし書の規定の適用を受けるもの又は贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の規定が適用されないこととなったものを除く。)を含まないものとし、当該課税価格の計算の基礎に算入された資産につき換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の規定の適用を受けた場合における換地処分若しくは権利変換により取得した資産を含むものとする。

 第一項の規定を適用する場合において、第一項の規定により第一項に規定する取得費に加算する金額は、譲渡をした資産ごとに計算するものとする。

 第一項の規定の適用を受けた個人が相続税法更正の請求の特則の規定による更正の請求を行ったことにより第一項の相続税額が減少した場合において、当該相続税額が減少したことに伴い修正申告書を提出したこと又は更正があったことにより納付すべき所得税の額については、所得税に係る国税通則法定義(法定納期限)に規定する法定納期限の翌日から当該修正申告書の提出があった日又は当該更正に係る更正又は決定の手続に規定する更正通知書を発した日までの期間は、延滞税の規定による延滞税の計算の基礎となる期間に算入しない。

10 第二項、第三項及び第五項から前項までに定めるもののほか、相続税法相続開始前三年以内に贈与があった場合の相続税額の規定の適用がある場合における第一項に規定する同法の規定による相続税額の計算その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 参考:国税庁HP「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」