国際的租税回避スキームの世界で、切っても切り離せない話のひとつに、租税法律主義における納税者の法的安定性と予測可能性の話があります。この議論も昔から延々と続けられている話の一つですが、相続税の世界でも同じようなことが起きています。
相続税対策としてタワーマンションを利用するというのを聞いたことがあるかもしれませんが、このタワーマンションの評価で、納税者と税務当局の間に問題が勃発しました。分かり易く言えば
納税者「税務署のルールに従ってマンションを評価して申告しました」
税務署「これでは低すぎるので国税庁長官の言う金額に直してください」
納税者「何ですかそれ?だったら先に言ってください!」
税務署は納税者のタワーマンション評価が不当と考えたわけですが、通達に沿っているので別の通達を引っ張り出して「こっちを使え」と言ってきたわけです。その裁量に納税者側が、憲法に定められた租税法律主義の法的安定性と予測可能性に反すると主張しました。
この事案で、税務署が納税者の評価を不当と考えたのは「時価」の問題ですので、国際的租税回避事案とは少し論点が異なるのですが、税務当局から見れば、やり過ぎが目に余って認められないということなのでしょうか。
ルールに従って申告したのに適用通達が違うと指導するなら、税法をもう少し分かり易くすることが納税者サービスの観点から必要なのかもしれません。